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今年(?)書いたものまとめ2016

2016/12/27 00:17
昨年というかここ2年ほどあまりにも書かなかったためにやらなかったのを今年はできるような気がするというか今年も少なすぎるんだけど昨年よりはマシだしむしろもっと書くためにできることはやろうキャンペーンというぎょんべらむ。

せっかくなので2014年と2015年のやつもやっておきましょう。

2014年

【仮面ドロワー】東方創想話投稿
文章量:約7KB

もう言っていいよね。実を言うとこれ、とある立ち消えになったSS合同企画に出したはずの原稿なんですが、主催が音信不通になってしまい1年くらい塩漬けになっていたのでもうええじゃろ、って感じで日の目を見せてあげた感じのやつです。つまりこのブログ記事を書いてる時系列からすると3年も前だ! 光陰 is アロー。秘封倶楽部でヤヤコシイ話を書くことに快感を感じる身体に調教される前はアホっぽいお話を書くの大好きだったよなぁ、と色々思い出しながら書いたので楽しかった、んじゃないかなぁ3年前の俺。四面楚●歌の人●比良さんとかいう脳にドロワーズの詰まった人に「つくしさんくるったの?」とか言われたのが印象深いです。ドロワーズイエーイ。こころちゃんのセリフに採用してる形式は今後もこころちゃんSSに使っていきたい……と思いながら東方SSを長い事書いてません……まだやめたわけではないよ多分。

【廻京徒歩】
第4回科学世紀のカフェテラス 文章量:約36KB

秘封倶楽部が京都の実在の地を巡ってグダグダしゃべるだけの短編集。前年に出したコピー本の6本に4本を加えて、さらにどの章も文章を1.5倍に増量する大改修を加えてるんですが、ぶっちゃけほぼ手癖で書ける上に自分でも読んでいて面白いというあらゆる意味で俺得な形式です。取材さえすれば書ける。そして実際に次の年には同じ形式で追加4篇を書いています。ダウンロードページからどうぞ。

2015年

【さよならドクター・マクドゥガル】「電波塔で待ってる」所収
コミックマーケット88 文章量:約8KB

宇佐見菫子合同のやつ。いやもうホント衝撃だったよね彼女の登場。そしてその熱で暴走してしまった哀れな人達が寄ってたかってできてしまった合同なわけでその哀れな人たちの一人がそう僕だ。自分の中での菫子というキャラをどう描き出すかと考えたときに脳裏に浮かんだのが幽々子さまというか、東方SSこんぺでもそうですけど妖々夢主従ホント僕の中では勝手に物語作ってくれる存在すぎてありがたい。タイトルはもちろん、「魂の重量を実験により実証した」偉人からです。

【潮を早み】「陽炎型の玉手箱」所収
砲雷撃戦よーい!18 文章量:約13KB

艦これSS。陽炎型SS合同と聞いて我慢できずに駆けつけたアンドリュー・T・Kこと春日野土筆です。艦これSSについては僕の中での艦娘観とかいろいろあるんですが合同誌に出すものとしてギリギリ受け入れてもらえる限界くらいまで出したつもりです。ガッツリ個人誌でやるならもっと好き勝手やる(艦これ本が出るとは言ってない)。陽炎ほんとすき、不知火ほんとすき、黒潮ほんとすき、しか言わないbot特有の文章に仕上がってるのではなかろうかと思います。タイトルは崇徳院の「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ」からです。一方原作では早潮よりもさきに親潮が来た。

【マシュ日記(仮)】「今は脆く、けれど硬き盾にて」所収
コミックマーケット89 文章量:約21KB

FGO人理修復おめでとうございます。そんなクラス・バーサーカーの後輩スキーたちの集った本でしたがふたを開けてみたら僕が一番おとなしいやつ書いててアルェーってなりました。僕がいつもやる「人物が外界を見る視点そのものを利用してその視点人物のキャラクターを描写する」という小狡い手法のやつですね。原作で何も明かされてない細部を勝手に妄想して勝手な造語もたくさん使ったので13KBにしてはボリューミーに見えるかもしれません。情報量的な意味で。ところでタイトルの通り日記形式にしたところ主催が「じゃあ日記形式で横書きにしよっか♡」と言ってきたのには戦慄しました。いい仕事です。

2016年

【Eine erbärmliche Katze】pixiv投稿
文章量:約9KB

ガルパンSS。タイトルを訳すると「かわいそうな猫」。最初にこんなタイトルにしてしまったばっかりに「逸見エリカ主人公のSSはドイツ語タイトルにする」という謎の自分ルールができてしまうことに。しかもまた逸見エリカSSのはずがどっちかというと「ぼくのかんがえたさいきょうの西住どの」という感じに。ただこの、ガルパン世界ならありそうで、でも劇中では書かれていないシチュエーションを持ってこれたのは自分でも気に入ってます。

【アヒルスープと薔薇メンマ】pixiv投稿
文章量:約7KB

ローズヒップ可愛い!!111 だけで書いたSSですが後日検索してむしろアヒルさんチームSSの少なさに泣いた。なんかローズヒップと相性良さそうな気がしたんですよねこのメンツ。さらに後日色々勉強して聖グロの学生生活観も少し変わってしまったので今書いたらちょっと違う内容になってたかな、とは思います。よく食べる女の子は可愛い。

【Der beste Prediger ist die Zeit.】pixiv投稿
文章量:約10KB

タイトルを訳すると「時間こそが最高の教育者である」。ヨーロッパなら割とどこででも伝わっているような格言らしいです。キャプションで引用したのはもちろん「ファウスト」の名文句、「止まれ、汝はいかにも美しい」です。エリみほとみほ杏超好きなのでじゃあPPAP式にガッとくっつければよくね? という発想でこうなった感じです。杏というキャラにぶつけることでわりと珍しいエリカ像を描写できたのではないかと。

【Die unschuldige Welt)】pixiv投稿
文章量:約9KB

タイトルを訳すると「Innocent world」。日本語じゃねーのかよ、ではなく、はい、ミスチルです。最後のほうの西住殿のセリフを思いついて、そこから膨らませていった感じです。またこいつのSS女の子に飯食わせてる。あと文章のリフレインとか時系列とか色々小技も利かせてます。逸見にはつよくなってほしい。小梅さんは可愛い。

【Kein Name Tag】pixiv投稿
文章量:約7KB

タイトルを訳すると「No name day」。またかよ、じゃなくて今度は僕の一番好きなアニメである「フタコイオルタナティブ」のサブタイトルからです。そのタイトルの通り、まったく特別ではないとある一日を描写しただけの話です。とはいえ、カップリングSS書くぞ、という明確な意図を持って書いたやつではあります。これもいろいろ小賢しい小技全開趣味全開でやってるのでもし興味のある方に聞かれれば嬉々として全力で解説します。

【ブラック・ティーをあなたに】「葦鹿は海を渡らない」所収
パンツァーガールズ8発目 文章量:約25KB

ダージリン様SS合同に、主催から「黒森峰要員はいねーがー!」と出刃包丁片手に迫られたので参加しました。内容としては、ダー様にとってまほさんってどういう人だろう……?と考え、月刊戦車道の例の記事とかを見て、それでこうなった感じです。書いてる途中凄まじい勢いで詰まったんですが、まほさん視点にこだわらずに変えればよくね? と思いつき、それでスルッと文章が進んだので、最終的にあんな感じの形式になりました。タイトルは参考にした紅茶関連本がなければ出なかったでしょう。
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【2013年】今年書いたのについてぼやく

2013/12/26 01:00
恒例行事。



【赤いミームはなき声をあげる】「科學奇幻」所収
博麗神社例大祭 文章量:約22KB

 「東方×SFで合同すんぜ!」と言われてホイホイついて行ってしまったわたくし。やるならそりゃああのキャラしかないだろう、と思ってがんばりました。少なくともハードSFにはかすりもしてないですが僕の中ではこれもSF。イメージとしては「Self-Refernce ENGINE」とか「犀が通る」みたいな手法を、ただ円城塔文体なんて到底真似できないので手法だけお借りした感じというか。某氏が言うには「火照るパン小説の入門に最適」だそうです。こ、こわくないよ!


【きゃっとそんぐ・しんぎん・あばうと・あ・ぱすと】「world and cronos」所収
博麗神社例大祭 文章量:約30KB

 昔語る猫のフフフン。頭文字がWとAとCの、分かる人にだけ分かる合同、分からない人には普通の秘封合同というアレです、書き手は弁士Tさんらしいですが僕も関わっていますというアレ。こっちはコミカルにいろいろやりたいと思って書いたんですがネタの源流は「四畳半神話大系」に「成恵の世界」のとあるエピソードのエッセンスを加えた感じです。


【アンタレスの断章】「world and cronos」所収
博麗神社例大祭 文章量:約17KB

 蠍です。こっちはストレートに青春やってみようと思ったもの。なにげに他の火照るパン小説ではあまり見ない内容のような気がしますよ? 時系列がバラバラにカットアップされた断章が並ぶ構成はアレですね、ニンジャスレイヤーですね。ごめんなさい嘘です。メリーがピアノを弾く姿を見たいだけの人生だった。


【千年幸福論】「アリスト」所収
博麗神社例大祭 文章量:約80KB

 テン年代のゼロ年代延長型文芸合同誌「アリスト」にお呼ばれしてしまったものです。参加者それぞれがリスペクトする作家を最初に決めて書き始めた本なのですが、そりゃあ僕は当然舞城王太郎なわけで、文章もそっちに寄せてみました。とはいえ、パスティーシュしたことで改めてよく分かったんですが、ぼくは舞城王太郎好きだけど、舞城ではないな、という(当然だ)。いや、「これ確かに舞城の文体真似してるけど絶対舞城が書かない内容だな……」と思ってしまう箇所が執筆中に数えきれないほどあって、自分のクセや思想が再確認できて、冗談じゃなくマジで勉強になりました。イラスト描きで言えば模写みたいなものですね……。妹紅が主役で、舞城っぽさを取り入れつつ妹紅の生き方をガッツリ書こうと思い、プロットを固めた後で、タイトルは「あ、これがぴったりだ」と思った、ロックバンドamazarashiの同名曲「千年幸福論」から頂きました。「ドナドナ不要論」とも似てる。似てない。


【ウサミンワンダーランド!】
コミックコミュニケーション 文章量:約28KB

 火照るパンでは恐らく初となる東方以外の本。アイドルマスターシンデレラガールズ本です。モバマスという作品と火照るパンの小説っぽさに折り合いをつけてくれる仲人はラドウィッジ・ドジソン氏に違いないと思い、「Alice's adventure in Wonderland」つまり「不思議の国のアリス」パロディと相成りました。なにげに一番楽しかったのは輝子のシーンを書いてる時だったような気がします。ただこれ×××で一気に書き上げたのでわりと僕のお脳のほうがワンダーランド状態でモウロウとして書いていたのでなんというかワンダーランドっぽくなってるんじゃないかと思います(こなみかん


【クリーム色のレイテンシ】「異世界からのラブレター」所収
コミックマーケット84 文章量:約14KB

 「超遠距離恋愛」をテーマにしたオリジナル小説合同誌への寄稿です。オリジナル小説を同人誌の形にするのは初めてだしそもそもまともにオリジナル小説を書くのも久しぶりだったので一体どうすりゃいいのかと考えた結果、いつもの自分で行こうという結論になりこうなりました。なんとなく覆面名義で寄稿したのですが正体を明かせば「あーつくしが書きそうな話だわ」と納得いただけたのはないでしょうか。ふたを開けてみると他の参加者みんながかわいいキャラクターを前面に出したエンタメを書いている中で一人空気読んでない感満載でひっじょーにアレでしたが。


「閑話求代」所収より、書き下ろし作
求代目の紅茶会 文章量:書き下ろし計 約22KB
【妖精は哲学する】

 今回の書き下ろしの中で唯一、以前からネタを温めていたものです。他はこの短編集を出すことを決めてから考えたネタ。この組み合わせはわりとアリなのではないかと。
【ゴンドラの唄】
 小鈴は本当に便利なキャラで、他のキャラではなかなか見せられない阿求の一面を引き出してくれます。あきゅすずかわいい。
【阿求ロボ】
 本来僕はこういった作風を好む書き手だったはずなんですが某氏に「つくしさん疲れてるんだな……」と憐みの目を向けられてアルェー?ってなりました。
【花の香】
 いやもうこの組み合わせ最高だよね! というリビドーだけで衝動的に書きました。あとはあきゅまりさえあれば世界は救われたも同然。


合計213KB
去年より大幅減。らいねんほんきだす(鬼笑
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【書評もどき】「村上春樹いじり」を読んだ。

2013/12/13 23:34

村上春樹いじり
三五館
ドリー

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「やれやれ、僕は射精した」

 この言い回し、村上春樹を読んでいなくとも、ネット界隈にある程度の長さコミットしている人なら一度くらい目にしたことがあるだろう。もちろん(あるいは流石に)、こんなフレーズはそのまま春樹の小説に出てくるわけではなく、これをネットに書きこむ人もそれを承知でネタとして書いてるわけだけれど、ある意味ではこの短い文章は村上春樹という作家のエッセンスをこの上なく上手く凝縮しているといえなくもない。
(このエッセンスを短い言葉でいうなら、「ディタッチメント」「春樹的クール」「セックス」の3つということになるだろう。知らない言葉があっても意味は別に考えなくていい)

 だからこそ、このフレーズは、どこまで行っても「やれやれ、僕は射精した」でしかない春樹小説への嫌悪を表して書くのと、あるいは、真面目な顔をして射精するオッサンという冷静に考えるとかなり異様な絵面を茶化して書くのと、両方の立場から今も愛用されているのだと思う。

 そして、この「村上春樹いじり」という本は、村上春樹に興味を持てない人、村上春樹が気になる人、村上春樹を読んでもわけが分からなかった人に、
「とりあえず春樹の作品に込めたメッセージとか置いておいて、『やれやれ、僕は射精した』って面白がろうぜ!!」
 という提案をするという立場の、かなり斬新なブックガイドだ。

 ところで村上春樹は、その小説を知ってしまった時点で、
「あなたは村上春樹が好きですか?」
 という踏み絵的な問いを強要するタイプの作家だと思うのだけれど、先に僕の立場を表明しておくと、

「面白いけど、気に入らない」

 という回答になる。そもそも僕が春樹を知ったのはなんと大学生になってから、それも春樹ヘイトがまるで窒素のように空気中に漂う文学部日本文学専攻という空間で、アンチ春樹の急先鋒として一部で超有名な批評家の教授から、生れて初めてその名を聞かされたのだ。下手をすると純粋培養のアンチ春樹にすらなりかねなかった、作家との出会いとしては考えうる限り最悪のスタートであると思う。それでも僕は春樹を読み、自分の頭で考えて今の立場にいることを表明しておく。

 まぁ、僕のことは良い。要するに、僕は春樹に興味があり、どちらかというと「やれやれ、僕は射精した」と面白がるタイプだったので、この「村上春樹いじり」にはすぐに興味を引かれて読んでしまったという話だ。

 この本のポリシーは、以下の三つに集約されている。
 ちょっと長いけど重要なので引用する。


 もしこの本を手に取られたあなたがこの本を、おそらく装いを見て「村上春樹を誰でもわかりやすく紹介してくれる優しいブックガイド」と思われたのなら、それは誤解です。もちろんブックガイドです。わかりやすいのもお約束します。しかし読んでもらえればわかりますが、この本はブックガイドと銘打っておきながら、あまり村上春樹の小説を褒めておりません。むしろ貶している評までございます。
 しかしどんな評であっても、その本を読んでほしい。いくらつまらなくても、そのつまらなさを読まずに切り捨てるのではなく、じかに見て確認してほしい、という魂胆は、ほかのブックガイドが持つ意思と変わりません。(本文 p1〜2)


 ちょっと読んでみてもまったく「良さ」がわからず、村上春樹のある「特異な作風」になんだか背中がむず痒くなる。(中略)その村上春樹が嫌いな方が大方感じるであろうスノッブさやら、キザさやら、そういう村上文学の「イヤな部分」を本書では「おかしみ」に変えたいという試みを実践しており、「女と寝る」「ジャズバー」「オンザロック」などという村上文学のアイテムにめざとく反応しては「なにがオンザロックだよ」と合いの手を差し伸べ、「笑い」という肯定的な感情を起こしたいというのが、手前味噌ではありますが、本書がほかのブックガイドとは趣向の異なるもうひとつの試みでもあります。(本文 p3)


「よくわかんねぇ」って文学作品には言えない空気って、あると思うんですけど、そこをね、勇気を振り絞って言ってみてほしいのよね。そこから始まるものもあるし。
 文学作品に接したときに、自分の感想が言えない。よくわからなかったんだけど、馬鹿にされそうで怖い、みたいなところから読書離れって生まれるんだろうと思うし。よくわかんないで(筆者補足:この本の作者が)これだけ語れるんだから、まずは読んでみて自分の感想を言える土台を作ることが重要ですよ。だからもし読書人口を増やしたい、村上フォロアーを増やしたいっていう本書のようなブックガイドでも「よくわからねぇ」は全然言っていいし。むしろ積極的にどんどん言っていこうよ。
 ボクは何度でも言うぞ。よくわかんねぇ!!!(本文 p182)


 この三つを軸に、この本は春樹文学の解釈やら小難しいことを打っちゃり、春樹主人公の超然としたクールな態度、やけに小洒落た言い回しなどを「春樹的クール」と名付け、徹底的にツッコんでいく。「風の歌を聴け」についての評から引用すると、

 この春樹的クールさにのせれば、あらゆるフレーズもなんかかっこよさげに聞こえます。たとえば122ページの「僕は自分が一時間ごとに年を取っているような気さえする。そして恐ろしいことに、それは真実なのだ」というなにか名言めいたフレーズもよく考えてみると「当たり前だろボケがぁ!」と思わず小突きたくなるシロモノですが、なんかそれらしく見えてきます。「あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉えることはできない。僕達はそんな風にして生きている」(P90)という言句も、なんかかっこよさげなことを言っているようで、よく考えたら別にたいしたこと言ってません。雰囲気です。(本文 p13)


 と終始こんな調子で、「こいつ、クソだわ!」「ぶん殴るぞ」「ボケ」「死ね!」という言葉とともにズバズバっと春樹のいやらしいところに斬り込むさまは見ていて非常に爽快で、「ビール」「コーヒー」「サラダ」「バナナダイキリ」などといった春樹的クールアイテムにいちいち突っかかっていくさまなど、僕は腹を抱えるほどに笑ってしまった。

 だからと言って、ただ単に春樹をネタにして貶すだけの本なら僕がこうして記事を書こうと思わなかっただろう。こういう笑いを誘うネタを連発しながら、なにげなく作者は鋭い視点を発揮していて、それがすごいのだ。

 本文中の章題から抜き出してみると、

『下世話なスケベ根性を排除する春樹』
『人様に顔向けできる「喪失」や「悲しみ」』
『春樹の悪いクセ=「男が求めることを女から切り出す」』
『春樹文学のいつものガラス工芸ヒロイン』
『「その答えはどこまでいっても、イエスでありノーだ」』


 ……などなど、僕のようなある程度春樹を春樹のままで受け入れられる人間が見逃してしまいがちなところにズバっと切り込む話題がたいへん多い。他にも秀逸な章題が多いので紹介したいが割愛する。
 この作者が提示してくれる視点、実は僕には既視感があり、それは何を隠そう、前述した僕に村上春樹を教えた批評家、渡部直己の春樹論だったのだ。もしこの作者が指摘する「春樹的クール」「春樹的ご都合主義」を渡部直己に語らせるなら、「悪しき黙説法」「自己愛の肯定しかない小説」という若干小難しい言葉になるだろう。渡部直己が文学者向けに言っていたものを、作者はいとも簡単に、万人にわかる言葉で指摘しているのだから、僕は本当に恐れ入った。

 つまり何が言いたいのかというと、この本は良くも悪くもとても軽薄で、なおかつガチなのだ。僕のような下衆な根性を持った春樹読者なら是非読むべきだし、春樹が嫌いな人や春樹を読んでも分けがわからなかった人も読んでみるといいと思う。特に、「わからないならわからないと言っちゃえ!」という作者の態度には大変共感した。特に春樹作品には「わからないところに何か大切な何かが書いているような気にさせる」詐術が盛りだくさんなので、わからないと言うと馬鹿だと言われそうな恐怖があり、そこで敬遠してしまう人も実際多いだろうから、この本がその恐怖をちょっとでも軽減し、春樹を読んでバカ笑いできる人が増えれば作者にとって本望だろうし、僕だって嬉しい。

 ……ところで、ここから下の記述は、ただでさえ書評になっているか怪しいこの文章の中で、さらに書評から遠いものになる。

 読み終わって、この本のamazonレビューを眺めていると、

「読みが浅い」
「表面的な部分にしかつっこめてない」
「分からないなら分かってから書け」

 などという批判が散見される。
 この記事でも挙げた、「読んでほしいからこそ良いところも悪いところも正直に書く」「メッセージとか意味とか置いといてとりあえず春樹的なサムシングを面白がる視点を提供する」「わからねぇものはわかんねぇままでいいだろ」という三つの軸は、本文中で何度も反復して出てくるというのに、あたかもそれが目に入らなかったように、だ。

 もちろん、こういう事を書く人たちに「じゃあ春樹がこの作品に込めたメッセージって何ですか?」って聞くと誰一人として答えられないことは目に見えているので、そういう大人げないことはしない。
 僕は考えた。なぜ、このようなことを言い張る人たちが出てくるのか。その原因をこそ考えるべきではないかと。
 そして、春樹の作風……春樹的クールの応酬、定番的な春樹的クールアイテムの配置という要素を、改めてこの本を読んで俯瞰し、ひとつ、思いつきを得た。

 これ、ジャンル小説じゃん。

 ジャンル小説、すなわち、ミステリ、SF、恋愛、時代小説……といった、「○○もの」と呼んでひとつのクラスタを形成できる小説群のことだ。
 ジャンル小説にはそのジャンル特有の「お約束」があり、そのお約束展開やお約束アイテムを組み換え換骨奪胎することで、そのジャンル内でのその作品の個性が生まれるのだ。なので、ジャンルの背骨を為すそれにつっこんでいては、作品をまともに楽しめないだろう。
 たとえば……ここではわかりやすく、漫画の例を挙げるけど、

 名探偵コナンに、
「なんでコナン達は毎回殺人事件にでくわすんだよ」
「コナンがしゃべってるの見えるだろ! 気付け!」
「犯人がいつもちゃんと自白するのはなんでだよ!」
 と言い、

 ニセコイに、
「なんでこんなヤツがこんなにモテるんだよ!」
「こんな都合のいい美少女いるわけねぇだろ!」
「鈍感すぎるだろ!!! 死ね!!!!!!!」
 と言ったところで、作品は揺るがないのだ。

 なぜならそれはジャンルものを構成するピースたちであり、それらの組み合わせ、組み換えによってジャンルは成り立っているのだから、そこにつっこむのは、それは初めからその作品を読む意思がないに等しいのだ。

 つまり、
 ミステリにおける「犯人」「探偵」「ワトソン役」「殺人事件」「トリック」
 ラブコメにおける「無意味にモテる主人公」「美少女」「幼なじみ」「ラッキースケベ」
 と、
 村上春樹における「コーヒー」「サラダ」「パスタ」「やれやれ」「セックス」
 は等価だと読めるのではないだろうか?

 ならば、村上春樹の小説はもはや「純文学」ではないし、「文学」ですらない。
「村上春樹文学」という名のひとつのジャンルを一人で作ってしまったのだ。言うなれば、立川談志が落語の中に「立川流」を作ってしまったのと同様に。

 そう解釈すれば、この本を読んで顔を真っ赤にする人たちの心情もいくらか理解できる気がしてくる。この本は、彼らにとって春樹というジャンルの根本を茶化すだけの本なのだ。最初から読むなと言われても仕方はないかもしれない。

 とはいえ、例えばめだかボックスという漫画について、信者よりもアンチの方が作品についての読みが深かったり詳しかったりする事例もあるし、コナンについて「バーローwwwwww」「ネタバレ:コナン=新一 → んなわけねーだろwww」という茶化し方をして楽しむという楽しみ方も、またひとつの作品の受容のしかたとして存在していいはずだろう。

 最後に、動画をひとつ紹介したい。
 ニコニコ動画に挙げられている「ゲーム実況動画」のひとつで、「Dance!Dance!Dance!」というゲームの動画だ。
 ここまで読んだ方なら、このタイミングでこの動画を紹介する意味をもう察しただろう。この動画を楽しめる人なら、百パーセントこの本を楽しめるだろうと、保証して、筆をおくことにする。




(僕が今まで読んだ春樹に関係する本も挙げておく)


リトル・ピープルの時代
幻冬舎
宇野 常寛
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物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21)
角川書店(角川グループパブリッシング)
大塚 英志
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【ネタバレ】劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語

2013/10/31 22:09
あまりにも、これは、語らざるを得ないように出来上がっている映画なので、らしくないのは承知の上でブログなど使って見ます。

もちろんネタバレしかないよ。










































一言で言うなら。

「まどかマギカは神学」

でしたね。勿論一言では言い切れないたくさんのものがあったのですが、言い切れないがゆえに、この一言で済ましてしまいたいところでもあり、しかし、それはパンフレットを見る限り制作側にとって望ましくないでしょう。なので、僕もその思惑に乗ってこのような文章を吐き出してしまうことにします。

この映画を観終わって、僕がまず最初に思い出したのは、舞城王太郎の「好き好き大好き超愛してる。」でした。この小説がどのような小説かと言うと、発表当時、世の中はどこぞのハーラン・エリスンのタイトルのパロディの孫引きパロディのタイトルがついた映画の牽引した「純愛」ブームまっただ中で、広告業界はとりあえず「純愛」と言っておけば一定以上の評判を得られる安牌を手にしてウッハウハな状態でございました。要するに、「純愛」と銘打たれた何かが、物語を再生産するための道具としてひたすら消費され続けていたのです。その「様式化」=「メタ化」されてしまった「愛」について、「メタ化されてしまった、抜け殻になってしまった愛を、それでも愛として語る」ことに挑戦した小説、一言でまとめるならばそんな小説でした。

「好き好き大好き超愛してる。」は、「柿緒」と銘打たれた連作短編のあいだに、おそらく「柿緒」の語り手である小説家が書いた小説であろうという解釈ができる(もちろんそうではないという解釈もできる)別のバラバラの短編小説が挿入されるという形式を取っています。その全部が、「愛」について語っているのですが、ひとまず、ここで必要なのは「柿緒」の章なのでそれを説明します。

「柿緒」の章は、小説家である語り手と、不治の難病によって死んでしまった恋人との関係を描いた、例のエリスン孫引き小説のパロディともいうべき構造をしています。そこで違うのは、例の小説では物語を駆動させる道具として使われていた「愛」を、その外側からメタ的に考察することで、逆説的にメタ化することを防いでしまっていることにあります。
(いい加減まどかの話から逸れてますが辛抱してください)


 愛は祈りだ。僕は祈る。
 (中略)
 祈りは言葉でできている。言葉というものは全てをつくる。言葉はまさしく神で、奇跡を起こす。過去に起こり、全て終わったことについて、僕達が祈り、願い、希望を持つことも、言葉を用いるゆえに可能になる。過去について祈るとき、言葉は物語になる。
 (中略)
 この祈りこそが奇跡を起こし、過去について希望を煌めかせる。ひょっとしたら、その願いを実現させることだってできる。物語や小説の中でなら。

         ――「好き好き大好き超愛してる。」冒頭

 そして、肝心の僕が思い出した一節は次のものです。この、「叛逆の物語」においてほむらがやってしまったのは、こういう事なんだと思いました。

 くそ、僕はバカだ。僕は他の人がうっかり言い忘れそうな言葉はちゃんと柿緒に言っておいたつもりだったけど、ただ一言、言い忘れてしまった。「好きだ」「愛してる」「ありがとう」「忘れない」「柿緒はすでに僕の一部だから、僕の中でずっと柿緒は生き続ける」なんてウンコみたいなことばっかりは言ったけど、いや、それは言えて良かったんだけど、でもたった一言、「死なないでくれ」と言うのを忘れた。(中略)僕の本当の気持ちを全然言ってなかった。僕は本当は柿緒に死なないでくれと泣いてすがりたかったんだ。病気のまんまでもいい、辛い思いが続いてもいい、痛くて苦しんで泣いたり喚いたりひどい有り様でもいいから、そんなの我慢して生き続けてほしいと、自分勝手なことを頼みたかったんだ。でも柿緒にそんなこと言っても、癌を抱えてどうしようもないだろうと、僕は遠慮してしまった。アホですよ。ホント。

         ――同小説、単行本版39ページ〜40ページ

 ほむらは、まどかが望んだ「魔法少女が希望を持つことが肯定できる世界」を肯定し、前に進むということでテレビ版は終わりました。でも、それは本当の本当にほむらが望んだことだったのか?
 他のすべての魔法少女のために自ら生贄となることを望んだまどかに、本当は「犠牲になんてならないでくれ」と言いたかったのではないか?

 そして、それを実現させた結果、ほむらは悪魔になった、と。神に対等にものを言うためには、サタン(ヘブライ語で反逆者の意)になるしかなかった、と。とはいえ、中盤までは、ほむらはまどかの意思を尊重して、まどかを、世界を肯定するために、呪いを抱えたまま永遠に魔女として閉じこもる決意をしています。なのに、ほむらの本当の気持ちを肯定してしまうきっかけを作ったのはまどか自身というところが、この物語のままならないところであり、世界の悪意だと思います。

 とはいえ、こうなった以上、これはほむらにとってはこの上ないハッピーエンドで、ほむらの立場に立つ限り視聴者もハッピーエンドだと断定するしかないんですよね。「愛の物語」として完結してしまってる。でも、その完結を破られることすら、ほむらにとっては幸福でしかないでしょう。まどかを否定したほむらを、またまどかが否定する。それをまた否定する。それだけが、「悪魔」としてのほむらが「円環の理」まどかとの間で許された、唯一のコミュニケーションなのですから。もうこうなったらいかなる物語が再生産されようとほむら無双ですよ。優しいのもキモチイイ痛いのもキモチイイ状態。割りを食うのはキュゥべえだけ、という。あまりにも哀れすぎる。クソインキュベーターがあああああ!とか言ってごめん。百合カップルの痴話げんかに付き合わされてボロ雑巾になるしかないとか、マジで同情する……。

 ひとまず煮えた脳での僕の見解はそんな感じですが、でもこれ制作陣からの大きな宿題でもありましたよね。

「円環の理を書き換えたほむらの世界とは、どんな世界だと思う?」

 という。「魔法少女が希望を搾取されるシステム」を否定した「まどかシステム」=「円環の理」=「魔法少女が希望を肯定される世界」、それを否定した世界とは。でもぶっちゃけこのほむほむ「まどか」が存在を許されるならどんなずさんなシステムでもいいやとか言い出しそうでマジ恐い。愛ってこわい。
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2012年SSまとめ

2012/12/23 02:29
もはやこれを書くためだけにある感のあるブログ。


そして今年は同人誌でしか小説を書いていなかったという……創想話とかにも出したいんです。気持ちだけはあるんです。気持ちだけは。


【名前】:テコん道。(『じゃけ?』所収)
【戯言】:約6KB。東方椰麟祭にて発行の、サークル雨水たまり/穂積名堂のコピー本に収録。出た!食い物ネタ!あざとい!とはいえ広島をテーマにしたSSということで大阪人が書くならこのネタ以外にはありえなかったというアレ。星ちゃんかわいい。


【名前】:みそぎクエスト(『箱庭セラヴィ』所収)
【戯言】:約18KB。サンシャインクリエイション55にて発行の、サークル穂積名堂の本に収録。まさかのめだかボックス小説合同でございます。つくしがめだかボックスを書くなら禊ちゃん以外ありえまい&他の人のしなさそうなことをやろう、と思ったらなんだか昔懐かしい感じの同人小説が出来あがっていましたという。……いやいやこれでも球磨川禊というキャラクターをふかーく考察した結果に出来上がったものでしてね?マジでマジで。そしてその後に発売された「グッドルーザー球磨川」の内容を見て思わず噴いたのは別のお話。


【名前】:昭和20年のナイトフォール(『Viraja Aupamya』所収)
【戯言】:約28KB。第8回博麗神社例大祭にて発行の、サークルRedTailCatの本に収録。昨年の「Point Omega」に続き、このサークルならある意味難易度高いものを書いても読んでくれるだろう、と考えた結果、まだ同人誌でやってないことやるか!と思ったら擬古文のような良くわからない何かになっていた。タイトルの元ネタは「万延元年のフットボール」→「1973年のピンボール」のはずがどちらかというと「明治17年の上海アリス」に近い感じに……っていうかこの曲名も元をたどればそこに行きつくよね?


【名前】:夕方滅入る(『ミス・マーガトロイドの不思議な国ニッポン』所収)
【戯言】:約31KB。第8回博麗神社例大祭にて発行の、サークルTieStoryの本に収録。「永江さん」から続く幻想町Projectの本でしかもアリス。気合が入らないわけがない。アリスさん入門編、みたいなのを意識してトップバッター掲載を目論んだものの結果はああなったわけで(本をご覧ください)。ていうか月影のあさんに初稿渡したら一日たたないうちに自分の脳内にあったものを120%再現した表紙絵のラフが上がってきたときにはなんだこのひと神かと思いました。


【名前】:廻京徒歩(ぐるりきょうとぶらりあるき)
【戯言】:約13KB。コミックコミュニケーション16にて発行のコピー本。コミコミにはお布施の新刊を用意する余裕はなかったんですが何か本を作りたい、と思っていたときに京都旅行で撮りためていた写真が目につき、これを使ったものを書こう!となって書いたもの。この時の執筆速度は恐らく今年最高だったと思います。あっという間にできた。とても誰得感のある本ですがぼくはひじょうにまんぞくです。あと突発にもかかわらず表紙をジェバンニめいた速度で描いてくれた友人の柊タイガー氏に感謝。


【名前】:無題(妖夢剣戟掌編)
【戯言】:約8KB。東方紅楼夢8にて発行のコピー本。コピー本……?というかペーパーにURLを記載した電子書籍という謎の頒布形態をとったもの。妖夢スペースを取ったのに妖夢本を出すことが出来なかった申し訳なさに突き動かされてなんとかモノにしたというのが一番正確。妖夢の剣戟バトルはいつかやりたいと思っていた題材なのでこれをたたき台に来年に期待、といきたいところであります。


【名前】:→現虚←
【戯言】:約260KB。第二回求代目の紅茶会にて発行。タイトルはご随意に読んでもらって結構ですが一応読み仮名が必要なときは「めぐる」と読むのがサークル側からの見解ということで。これが今のところ間違いなく自分の持ってるもの全部使って書いたものです。もうケムリも出ません。できれば二回も三回も繰り返し繰り返し、色んな読み方をしてもらいたい本です。秘封ラブ。




以上、計364KB。……まさかの去年と全く同じ文章量。なんだこれは。進歩がないという暗示なのか。……ら、来年は倍書くし(フラグ)。
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サイト移転

2011/03/01 00:09
相も変わらず怠惰にもほどがあるつくしでありますが旧サイトブログの消滅に伴い急遽ブログなど新たにこしらえてみんとす。ぎょんべらむ。といっても別に書くこととかあんまりなく、そういえばあっきゅんオンリーお疲れ様でした楽しかったですぎょんべらむ。なんつーかもうぎょうんべらむって言っておけばなんでも許されるような気がしてその辺読者の皆様に甘えまくりな俺まじ害悪。ほろべ。ぎょんべらむ。
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